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2020年9月号

【新型コロナ】ワクチン開発はここまで進んでいる

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの開発が世界各地で進められ

ており、日本でも「DNAワクチン」の開発が臨床試験の段階に入りました。日本人のCOVI

D-19の重症化に関わる遺伝子を調べ、それに適合したワクチンや治療薬を開発する研究も進

められています。

 

≪期待がかかるDNAワクチンの開発≫

世界保健機構(WHO)によると、COVID-19に対するワクチン開発プロジェクトは、現在世界で

120以上が進行中です。しかし、新型コロナウイルスはウイルス量が少ないため体内抗体ができ

にくいなどの背景があり、ワクチン開発は容易ではありません。そんな中、いち早く実用化が期待

されているのが「DNAワクチン」です。

 

DNAワクチンは、ウイルス本体ではなくウイルスの遺伝子情報のみを投与する方法です。ウイル

スの遺伝子情報を入れたプラスミドDNAと呼ばれるベクター(運び屋)を体内に入れると、ウイ

ルスが細胞に侵入する際に用いるタンパク質が大量に発生し、それに対して抗体ができるというも

のです。細胞培養や有精卵で製造するワクチンと異なり、DNAワクチンは大量生産が容易で、製

造コストも高くはありません。また、ウイルスそのものではないため病原性はなく、安全であると

いう利点もあります。

国内では、大阪大学発バイオベンチャーのアンジェスが6月に、大阪大学と共同開発したDNAワ

クチンの第1/2相臨床試験を開始したと発表しました。国内初の治験となります。ワクチン開発で

連携協定を締結した大阪市立大学病院で治験を実施し、安全性と免疫原性を評価します。試験期間

は2021年7月31日までを予定しています。

 

≪mRNAワクチンの開発も進行中≫

東京大学医科学研究所が中心となり開発が進められているのが「mRNAワクチン」です。これは

メッセンジャーRNAを投与するもので、体内でコロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成され

免疫が誘導される仕組みです。

 

mRNAベースのワクチンは化学合成が可能で、製造工程の開発などに時間がかからず、安全性も

高いと見込まれています。日本医療研究開発機構(AMED)が支援し、東大医科研が進めている

研究で、mRNAワクチン開発を分担しているのは第一三共です。すでに動物モデルを用いた試作

ワクチンの評価で新型コロナウイルスに対して抗体価が上昇していることが確認されました。2021

年3月頃の臨床試験の開始を目指しています。

 

≪日本を代表する科学者が横断的に集まり研究を推進≫

さまざまな研究分野から日本を代表する科学者が横断的に結集し「コロナ制圧タスクフォース」が

立ち上げられました。この研究グループが目標としているのは「粘膜ワクチン」の開発です。これ

は、鼻腔や舌などの粘膜をターゲットとして経口や鼻腔スプレーで投与し、体内にウイルス抗原を

届けて免疫を誘導するというものです。注射より痛みがなく実用的だと期待されています。

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